57章 「これは涅槃か?」と思うほどの静寂

 

「一生分の煩悩が、まとめて一気に正面化したかのような状態」

 

これが数ヶ月続き、ひたすら、欲や、それに伴って生じる感情を、観察し続けました。

 

「欲」も、それに伴う「感情」も「思考」も、

全ては無常で、生じては滅するもので、実体が無い。

それらに執着したら苦しみが生じる。

 

そのように、観察を続けました。

時に、あまりに強い欲のエネルギーに巻き込まれ、思考が暴走し、

あるがまま観察しきれず、苦しむこともありました。

 

 

そして、欲を一つ一つ手ばなしていって、心が落ち着いてきたら、

「静寂」

が訪れました。

 

瞑想中に、強い集中力で、深い深い静寂の状態に入る時がありましたが、

瞑想をしていなくても、24時間、静寂が、続くのです。

 

以前書いたように、もうこの頃は、形ある瞑想が出来なくなっていました。

 

でも、心は静寂を保ったままです。

思考もほとんど生じません。

刺激に心が動かないのです。

 

刺激に反応しなければ、当然、感情も生じません。

今まで、味わったことが無いほどの静寂。

 

表面化していないだけで、潜在的な欲があることは分かっている。

 

でも、あまりにも静かなので、

「涅槃とは、このような状態なのではないか?」

という想いが生じるほど、

通常の心の状態とは違って、ただただ、心は静かでした。

 

1週間、その状態が続きましたが、だんだんと、思考が生じることが増えてきました。

 

しがみつけば苦しくなる、と分かっていながらも、

「ああ嫌だ、この静寂が終わりそうだ。続いて欲しい。」

と、その静寂を求める気持ちが生じました。

 

 

そして、2週間が経ったら、通常の状態に戻りました。

 

「静寂が続いて欲しい」

という欲がありましたから、

「心は無常だから、変化するのは当たり前だ」

と分かっていながらも、少々残念な気持ちが生じましたね。